双子の王子
「私はそのとき、長いことかかったお産に疲れて自分も死にそうなくらいだったから、疑いもしなかったわ。今、貴方たちが話してくれたことが本当だとすると――ええ、もちろん本当だと思っているわ。あの人ならやりかねないことばかりだし、調べに行かせたばあやたちが戻ってこないのもそのためだと思うから――あの人のために、辛い目にあわせてしまったわね、ルナ。……ごめんなさい。あの人は素直じゃないし立場と言うものがあるから貴方に謝ることも出来ないし、しようともしないだろうから、私が代わりに謝っておくわ。本当に、ごめんなさい」
深々と頭を下げたレティアにルナは儚げな笑みを向けた。
「気にしないでください。陛下が……父上がなさったことは当然だと思いますから」
「ルナ…怒っていいのよ? 泣き叫んだっていいわ。無理をして、自分を殺そうとしなくていいの。本当のことを言ってちょうだい」
レティアは少し腰をかがめ、ルナの顔を下から覗き込むようにした。
ルナは先ほどよりもやや明るく微笑み、
「本当の気持ちです。父上は私を殺さず、生かしてくださった。父上がいてくださったから、私はここにいる。――それだけで、十分です」
「嘘は吐いていないわね? 無理も……」
「していません」
レティアは深いため息を吐いた。
「まったく……本当に坊さんみたいに育っちゃって……。サジャになんて文句つけてやろうかしら」
「えぇっ!?」
驚いて声を上げたルナにレティアは笑って、
「冗談よ。もう、本当に堅物ねー。軽くてお馬鹿で短絡的なソルと双子だなんて、嘘みたい」
ソルは聞かなかったふりをしてレティアに尋ねた。
「それよりも、母上」
「なぁに?」
「どうして、ルナが母上の子供だと分かったのですか?」
「……それはね、スウォードが私との約束を守ってくれたからよ」
「約束?」
「そう。男の子が生まれたら、王家の伝統に則ってスウォードが名前をつける。その代わり、女の子が生まれたら私が名前をつける。そう、約束したの。貴方たちが生まれる前から色々な名前を考えて、最終的に決めたのが『ルナ』だったのよ」
だからなの、とレティアはルナの頬に手を添えた。
「貴方が男の子だって、すぐには思えなかったのは。女の子につけるはずだった名前だったから」
「そう…だったんですか?」
「あら、ずいぶん嬉しそうね」