双子の王子
「や、や、や、やだっ!ソルったらいつから見てたのよ!」
わたわたしながら窓を開けたレティアは慌ててふたりを部屋の中に引きずりこんだ。
「もう、ずっとソルの前では優しくって大人しい、素敵なお母さんしてきたのに、今更ばれちゃうなんて恥ずかしいじゃないの!」
「す、すいません母上…」
「しかも知らない子も一緒だし!」
その言葉にツキンとルナの胸が痛んだ。
そんな言葉を言われても仕方がないと自分に言い聞かせ、また覚悟してもいたが、面と向かって言われるとやはり悲しく辛いものだった。
レティアはじっとルナを見つめて言った。
「……あら? 貴方、私とそっくりね。髪の色とか目の色とか。お名前は?」
「ル…ルナです……」
その名を聞いて、レティアは目を見開いた。
「ルナ? 本っ……当に、ルナって言うの?」
「は、はい」
レティアはじぃっと、それこそ穴が開くほどルナを見つめた後、にっこりと笑って言った。
「ごめんなさい」
「え…?」
「知らない子なんかじゃなかったわね。そうでしょう? ルナ。私の可愛い……えっと………娘? それとも息子?」
せっかくの感動的な場面が最後の一言で台無しになった。
ソルはため息をつきながら頭を振り、
「母上……」
「だ、だって、ねぇ?」
「そりゃたしかにルナは女の子かと思うくらい可愛らしいですけど、れっきとした男ですよ」
「あ、男の子なのね。ごめんなさい、ルナ」
ルナはぶんぶんと首を振り、
「いっ、いえ、気にしないでください! 王妃様」
「…ルナ、王妃様なんて呼ばないで。貴方は私の――えぇと、そう、息子よね――息子でしょう?」
「でも…」
「それともなぁに? 城の外では母親のことを王妃って呼ぶのが流行ってるとか?」
「ち、違いますよ!!」
「じゃあ、なんて呼ぶのかしら?」
「……母上…」
「はい、よく言えました」
レティアはそう言って、本当にうっとりくるような笑みを浮かべた。
それこそ慈母のような…いや、レティアはまさしく慈母そのものだった。
「貴方とソルが生まれたとき、あの人……スウォードは、二人目の子は死産だったって言ったの」
ルナとソルを椅子に座らせて、紅茶を淹れながらレティアはそう話し始めた。