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織葉(おりは)
織葉(おりは)
novelistID. 1532
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双子の王子

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 時は流れ、今また王に子供が誕生しようとしていた。
 建国から七二三年が過ぎた、ある夜のことである。
 王は剣の王、スウォード。
 その印同様、武によって国を他国の侵略から守ってきた。
 彼は我が子の誕生をじっと待っていたが、その内心までは穏やかではいられなかった。
 もし、子供の胸に明らかな悪の印があれば即刻殺さねばならないのだから、それは当然と言えた。
 そしてたとえ印が善く見えても、読み違いと言うこともあるのだ。
 この国の王である者にとって、子供を得ること、育てることは、かなりの困難を伴うことなのであった。
 子供の存在さえ抹消する可能性を考慮して作られたかのように、産室は薄暗い石造りの城の一階にあり、多くの人が出入りする区域からは隔離された場所にあった。
 隠し通路や地下牢も用意されているのだろう。
 黴臭く、湿った土のような匂いが後ろめたく漂っていた。
 落ち着かない様子で妃のいる産室を睨んでいた王は、その控えの間よりも更に薄暗く、重苦しい表情をしていた。
 妃が産室にこもって既に半日が近い。
 落ち着かないのも道理であろう。
 ――もはや産声も聞かれないのでは? …いや、それはそれで構わない。
 そうとさえ、王が思った時、ふぎゃあ、ふぎゃあと産声が上がった。
 王は勢いよく立ち上がった。
 それでも王として、儀礼的ではあるものの、報告が来るのを待つ。
 しかし、いつまで経っても報告は来ない。
 痺れを切らしかけた頃に、もう一度、弱弱しいながらも産声が上がった。
 王は驚き、慌てて妃の部屋へ入った。
 子供を抱えた産婆が、途方に暮れた顔をして突っ立っていた。
「陛下――……」
「まさか…」
 王は子供を見てよろけた。
 武の王、剣の王であるスウォードが、ここまで動揺するのは初めてのことだった。
 子供は双子だった。
 どちらも男の子で、片方は金の髪に青い瞳、もう片方は黒い髪に黒い瞳だった。
 胸の印は黒く光る大剣と、白く浮かぶ錫杖だった。
 金の髪に大剣の印を持って生まれた子はソルと名づけられ、黒の髪に錫杖の印を持って生まれた子はルナと名づけられた。
 名をつけた王は言った。
「だが…この子は育てられん」
 視線の先にはルナの姿があった。
 産声さえ弱々しかったこの子供は、その手足さえもが力なく見えた。
作品名:双子の王子 作家名:織葉(おりは)