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織葉(おりは)
織葉(おりは)
novelistID. 1532
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双子の王子

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かつて世界は闇に覆われ、恐ろしい魔王の支配下にあった。
 人々は貧困や疫病に喘ぎ苦しみ、ドラゴンや魔獣に怯え続けた。
 その闇の時代を終わらせたのは、一人の青年だった。
 名は、グランテ。
 名字さえ持たない、ただの平民だった。
 彼は単身魔王の城に乗り込み、たった一人で魔王を討った。
 闇の時代は終わりを告げ、光溢れる時を迎えた。
 グランテは新しい国の王となり、城を、民を持った。
 建国から十年の時を経て、妻を娶ったグランテの前に、それは現れた。
 王妃の懐妊が明らかになり、建国十年の祝いの宴の席に一層の華やかさが起こった瞬間を狙いすましたかのように。
 闇よりもなお濃い、黒いローブに身を包んだ老魔女は、恐ろしくしわがれた声で、呪いの言葉を告げた。
「この国の王の息子は一人残らず、胸に印を持って生まれることとなろう。印はその者の本性を表す。善き者には善き印、悪しき者には悪しき印が与えられるであろう。善き者は善き政をし、国を闇より守るであろう。しかし、悪しき者は悪しき力によりて国を滅ぼすであろう。――ただ、忘れるな。善きも悪しくなれば、悪しきも善くなり得る。そして、努々忘れるな。この国が如何にして生まれたかを」
 王妃はただ恐れ、ぞっとしたように己が腹を見た。
 王は怒り、老魔女を塔に監禁した。
 そして、月満ちて生まれた子供の胸にはしっかりと、聖杯の印があった。



作品名:双子の王子 作家名:織葉(おりは)