双子の王子
「さっきも言った通り、それはあんたが望むものだけを斬る。斬りたくないと思えば通り抜けるし、剣を受け止めたりする時にはしっかりと受け止める。まぁ、もちろん相手の剣を斬ってもいいんだけどね。なんにせよ、うまく使いな。ほら、杖の王子も来たようだ」
そう言われて窓を見ると、錫杖に乗ったルナが、すぐ近くまで飛んできていた。
「ルナ!」
「ソル!」
「待ってろ、今斬り壊す!」
ソルが円を描くように剣を動かすと、スパッと壁が斬れた。
その破片が下へ落ちていかないように、ルナは錫杖に命じた。
「壁を押し留めよ。決して地上へ落とすな!」
まるで時が止まったかのように空中で静止した壁の側を通り、ルナは塔の中へ入った。
ルナは錫杖から下りると、心底ほっとした様子で、
「よかった…無事だったみたいですね。時間がかかってしまったのでどうかと思っていたんですが…」
「時間がかかったって…」
「杖を乗りこなせるようになるまでに時間がかかってしまったんです。もう、大丈夫ですよ」
苦笑混じりに言ったルナはアイピアを見た。
「貴方が魔女ですね?」
「はじめまして、杖の王子。私はアイピア。私からの贈り物、しっかり使ってちょうだいね」
「はい、ありがとうございます。ただ、聞きたいことが…」
と問いかけようとしたルナを手で制してアイピアは言った。
「残念ながら、今はお喋りしている暇はないみたい。詳しいことは剣の王子に聞いてちょうだい。とにかく今は逃げるのよ。逃げて、自分たちのやりたいこと、やるべきことをしなさいな」
「はい」
ルナは頷いて、ソルの手を握った。
「ソル…兄さん」
「サジャに聞いたのか?」
「はい。でも、詳しいことは後にしましょう。兵士たちが上がってくるみたいですから。兄さんの剣を少し貸してもらえますか?」
「ああ」
ルナは受け取って大剣に杖を当てると、
「黒き剣に空を飛ぶ力を与えよ」
と呟いた。
それから剣をソルに渡すと、
「乗ってください。そうすれば浮きますから、私についてきてください」
「ああ、頼んだぞ、ルナ」
「はい!」
ルナはそう笑い、自分も錫杖に跨った。
ルナは箒に乗った魔女のように、ソルは波に乗るように、夜空へと飛び出していった。
アイピアはそれを見送りながら、
「頑張りなよ、王子たち」
そう笑って姿を消した。