双子の王子
そう言って光を杖に灯して見せた室内は意外にも装飾がされ、整えられていた。
「これで…気付かれなかったのか? 俺を連れてきた奴らに…」
「そんな輩には目眩ましをちょいとね。…ああ、そんなことより、あんたの印のことさ。あんたの印は『黒き剣』。あんたが望む時、望む物だけを斬る剣さ」
「この印が…そんなものに……?」
疑わしげに呟いたソルにアイピアは顔を顰め、
「そんなものとはなんだい。この私の最高傑作なんだよ、それは」
「…なあ」
「あぁ? なんだい?」
「それなら俺の本性は何だ?」
そう問われ、アイピアはまじまじとソルを見つめて呟いた。
「…今日の騒ぎで気付いたかと思ったんだがねぇ…」
「何?」
「あんたの本性は剣そのものだよ。一度怒りが頂点に達すると止められず、なりふり構わず叩っ切っちまうような、ね。そんなあんたに黒き剣は危ないと思うかも知れないが、大丈夫。あんたの側には弟がいる。あの子が必ず止めてくれるさ。どんな時もね。それにあんたは、よく育ててもらったようだよ。自分を抑える術を分かっている…」
そう育てたのはルギだと思うと、ソルは顔を不快感に歪めずにはいられなかったが、ふるふると顔を振って言った。
「なあ、この剣が使えれば、俺はここから出られるんだな?」
「――ああ、保証するよ。錫杖とあわせれば何だって出来ると言ってもいいね」
「――じゃあ、頼む。俺にその使い方を教えてくれ」
「いいとも」
アイピアはにぃっと笑った。
「胸に手を当てて」
「こうか?」
「そう、印の上に来るように」
ソルは言われる通り、手を当てた。
「そうだよ。そうして、呪文を唱えるんだ。準備はいいね?」
「ああ」
「じゃあこの呪文を唱えるんだよ」
とアイピアは杖で空中に文字を書いた。
ソルはそれに一通り目を通してから唱えた。
「『魔王を討ち倒せし勇者グランテの子孫、ソル・スウォード・グランテが命じる。黒き剣よ、その姿を現世に現し、我が望みを叶えよ』」
ソルは手にずっしりと重さを感じて驚いた。
ソルの身長の半分以上はあろうかという大剣が手の中で輝いていた。
大剣は刀身も柄も真っ黒で、柄の飾りとして嵌った珠だけが白かった。
アイピアは満足そうにそれを見ると、説明した。