双子の王子
状況こそ違えど、問いの形は同じだ。
こんな時いつも、サジャはルナがどうしたいのかを尋ねていた。
ルナは言った。
「助けに…行きます」
我知らず、断言していた。
そう口にした時には、たとえ何の力添えも貰えずとも、そうする気になっていた。
だが幸い、サジャは笑みの形に唇を歪めて言った。
「ならばその胸の印を復活させ、その本当の力を目覚めさせねばなるまい」
「本当の力とは、何でしょう?」
「それは見れば分かることじゃ。ルナ、こちらへ」
ルナは静かに段を上り、サジャに近づいた。
サジャがルナの胸に手をかざすと、その手が強く白い光を放った。
部屋中を白く染め抜くような光に、ルナは思わず目を閉じた。
ルナが目を開け、視力が回復すると、サジャが言った。
「胸を見てみよ」
ルナはローブをはだけた。
「…消えています…火傷が…この白い印は……杖…?」
「錫杖であろう。ふむ…やはり時は満ちたのじゃな。――ルナ、その印に手を当て、こう唱えるのじゃ」
「はい」
ルナはそっと胸に手を当てた。
「魔王を討ち倒せし勇者グランテの子孫、ルナ・スウォード・グランテが命じる」
「『魔王を討ち倒せし勇者グランテの子孫、ルナ・スウォード・グランテが命じる』」
「聖なる錫杖よ、その姿を現世に現し、我が望みを叶えよ」
「『聖なる錫杖よ、その姿を現世に現し、我が望みを叶えよ』」
ルナが唱え終わると、その手に錫杖が現れた。
白く、王冠の形を模した飾りが頂点につき、下には尖った黒水晶が輝いていた。
「これは…」
「それが本当の力じゃ。持ち主の望みを叶える手伝いをしてくれる物。使い方はただ念ずるだけじゃ。ルナ、それについて詳しく知りたくば、ソルが囚われておる塔の魔女に聞くがよい。わしは託されただけ故、詳しいことは知らぬのじゃ。ソルは城の一番高い塔の天辺にいる。ソルを助け、魔女に会え」
「はい、行ってまいります!」
ルナは錫杖を手に部屋を飛び出した。
神殿を出、錫杖に乗ると命じた。
「飛んで!」
が、錫杖は応じない。
ルナは、もしかして僧正様に担がれた?と思いつつ、錫杖を見た。
そうして、錫杖を出した時の呪文を思いだす。
「もしかして…お前、命令口調じゃないと嫌…とか?」
錫杖は答えない。
しかしその黒水晶が光ったように見えた。
「――空を飛ぶ力を我に与えよ」