双子の王子
納得したように呟いたルナに、サジャは更に尋ねる。
「ソル王子の胸の印は見たのじゃろう?」
「はい。…黒く大きな、美しい剣でした」
「流石はスウォードの息子と言うべきか……」
「スウォード陛下も剣でしたよね?」
「そうじゃ。しかし、その刀身は白…ソルは黒じゃ。――ルナ、気付いておるかも知れぬが、お前とソルは双子の兄弟なのじゃ」
「私と…ソル…が……!?」
ルナは心底驚いて自分の胸へ手を当てた。
「その胸が焼かれたのは印を隠すためじゃろう。スウォードも惨いことをする…」
「――いいえ」
意外な強さを持った声で、ルナは言った。
「陛下を責めないでください。双子は不吉なもの、忌むべきものとされている上、ソルと私では髪や目の色も、胸の印も、ソルの方が陛下に近いのでしょう。陛下がソルを残し、私を捨てたのは当然のことです。私は殺されなかったことだけでも、嬉しく思います。それこそ、陛下が私を哀れんでくださった証しだと思いますから。――それでは、ソルが僧正様に尋ねたことは……」
「ルナが自分の兄弟なのかということじゃった。彼は賢い。お前からの話と胸の火傷からほとんど確信を得ていた。しかしルナ、彼が何よりもその根拠としたのは、お前と出会った時に感じた強い懐かしさと愛しさじゃった…」
「ソルも…あれを感じて……」
ルナは驚いたように呟き、小さく微笑んだ。
喜びに胸が震えた。
サジャは言う。
「ソルが幽閉されたのは、お前のことをスウォードに問い詰めたからのようじゃ」
「そんな…。私が、会いたいなんて…言ったから……」
「それは違う。ソルはスウォードなどにお前を会わせたくないと言っておったからな。おそらく、スウォードが何ぞ余計なことを言い、ソルが激昂したのであろう」
「僧正様は千里眼なのでしょう? もっと詳しいことは分からないのですか?」
「千里眼千里眼と人は言うが、そう万能なものではないのじゃ。特に、あの城は魔法使いが守っておるし、今日は朝から世界がざわついていてよく見えん…」
「世界が…?」
サジャはルナの疑問には答えなかった。
「さて――どうするかな、ルナ」
問われて、ルナは考え込んだ。
ソルを助けに行きたい。
しかし、ちっぽけな魔法しか操れない自分に、何が出来るのだろうかと。
けれどこれまでもサジャはルナに同じように問うて来た。