双子の王子
「あいつは…あいつはなぁっ…!」
ソルの顔は怒りのあまり真っ赤に染まっていた。
「あんたみてぇな親に、会いたいって…会いたいって言ってんだぞ!?会えないなら…せめて、元気でいて欲しいって…!!なのに、貴様はっ…貴様はっ…!」
ソルの腕を、衛兵が左右から抱えた。
王は冷たく、
「連れていけ。気が狂ったらしい」
そう命じた。
ソルはぎりりと唇を噛み、王を睨んで叫んだ。
「殺してやる! あいつが貴様に会う前に、絶対、殺してやる!!」
その身は城内で最も高い塔の天辺へ、押し込められた。
ルナは手を滑らせ、持っていた皿を落とした。
フィジデが驚いて、
「ルナが物を落とすなんて珍しいな」
と言ったが、既にルナは厨房を飛び出していた。
ルナはサジャの元へ一目散に駆けていき、部屋へ飛び込むなり言った。
「僧正様! 嫌な予感がするんです! ソル王子に何かあったのではありませんか!?」
「ふむ……」
サジャは唸るように答え、少ししてから呟いた。
「ソル王子は塔に幽閉されたようじゃな」
「ええっ!?」
「だが、あの塔は……いや、時は満ちたのじゃ。起こるべくして起こったのじゃろう…」
「僧正様…?」
サジャはルナの方を向き、尋ねた。
「この国の王子にまつわる伝説は知っておろう?」
「あ、はい。胸の印のことですよね」
何故今こんなことを、と思いながらもルナはそう答えた。
サジャが無駄なことを言うはずはないと考えたのだ。
「そう、一般に流布されている伝説では、年老いた魔女が呪いを掛け、王子の胸にその本性を表す印が出るようにしたと言うことになっている。しかし、現実的に考えてみよ。王子の本性を表すと言うことは、本来便利なことではないか?暴虐な者、暗愚な者がそのまま王にならぬよう、幼い時から教育出来るのじゃから」
「はい、それは何となくですが、分かります。しかし、二代目の王、クプの時は……」
「胸の印を人々は聖杯と見た。しかしあれは杯じゃった。それを人々が理解できなかったため、クプはその本性のまま育った。また、聖杯の印から名君になると思った周囲が甘やかした結果、ああなったとも言える。…杯を片時も放さず、酒色に溺れ、国を一時衰退させたような、暗君に。あれを杯と見抜く者が一人でもいれば、彼を酒から遠ざけ、名君にすることも出来たであろうに……」
「そう…だったのですか……」