双子の王子
面白そうにそれを見送ったソルはルナへ、
「なんか、賑やかな人だな」
「楽しいでしょう? お料理もとっても上手なんですよ」
「へぇ…。このスープも美味しそうだ」
窯から戻ってきたフィジデは、二人が仲良くスープをかき混ぜているのを見て笑い、
「お前ら仲いいな。兄弟みたいじゃねえか」
「そうですか?」
ルナは嬉しそうにそう言い、ソルは複雑そうな顔で曖昧に笑った。
やがて始まった食事はこの神殿にいる三十人ばかりの人が集まった、賑やかなものだった。
それこそ、神殿だとは思えないほど。
フィジデは配膳をしながらジョークを飛ばすし、それにサジャまでもが平気で冗談の応酬をする。
それを見て、ソルはどこかほっとした。
この人たちがいたから、ルナは孤児だということに引け目も感じず、明るく生きてこれたんだろうと。
この場にいる全ての人にお礼を言いたくなるのを堪えつつ、ソルも笑い、食事を楽しんだ。
狭く、小さな灯しかない部屋で、ひとつの布団に包まって、ルナは小さな声で言った。
「ありがとう、ソル。今日はこれまでで一番楽しい日になりました」
「どういたしまして、ルナ。明日、俺は帰るけど、またすぐ会いにくるから」
「…はい、待ってます」
寂しそうに、嬉しそうに、ルナは笑った。
翌朝、二人で神殿を出ると、扉のすぐ脇で夜を明かしたらしいルギがソルに駆け寄ってきた。
「殿下!」
「分かってる。さっさと城に帰るし、父上のお叱りも受ける。だから黙ってろ」
冷たくそう言い放ったソルは馬に跨り、ルナには逆に優しく言った。
「またな。そういう訳で急がないといけないから」
「ええ、お気をつけて、殿下」
「…ルナ」
「はい?」
ソルは馬から下りると、ぎゅっとルナを抱き締めた。
「殿下……」
「また、絶対来るからな、ルナ」
「…はい。楽しみに待っています。殿下もお体にお気をつけて…」
「…ああ」
そう言いながらも名残惜しく、ソルはルナを放せずにいた。
ルナは困ったように笑いながら、小さな声で言った。
「……あの、放して…ください…。お供の方が…凄い顔で睨んで…」
「え? ああ、すまない」
ソルはそれでもまだ後ろ髪引かれる思いで神殿を離れ、ルナはいつまでもそれを見送っていた。
ルギはじっとルナを見ていたがすぐにソルを追った。
「殿下、何をなさっていたのです」
「煩い」