双子の王子
「……どうしましょうか。ソルのお供の人たち…」
「まだ待ってるのか?」
「どうもそうらしいんです。あの様子だと、朝まで待つ気かと…」
「いいさ、待たせてやれ。それなりの訓練は受けているから大丈夫だろう」
「ソル、そんなこと言ったら可哀相ですよ」
「今、ちょっと頭に来てるんだ」
「え?」
「気にするな。それより、夕食は何だ?」
「あ…多分、パンと野菜のスープだと。野菜はお好きですか?」
「ああ。城の肉料理よりはずっと」
「肉が嫌いなんですか?」
驚いたようにルナが言うと、ソルは笑って、
「脂っこくてな。でも、どうしてそんなに驚くんだ?」
「皆、肉が美味しいって言うものですから…」
「好きな奴は好きだろうけどな。…なぁ、何か手伝えることはないか?」
「そんな、いいですよ。お客様ですから」
「気にするなって。これでも料理とか出来るんだぞ」
「ええっ!?」
「野営の時には料理が出来ないと困るだろ」
「あ…なるほど……」
「だから、手伝うよ」
「でも…ソル……」
「ルナ」
じっと見つめられて、ルナは諦めの息を吐いた。
どうも、ソルの瞳に弱いようだと思いながら。
「……分かりました。でも、フィジデさんの許可は得てくださいね」
歩き出しながら、ソルは尋ねた。
「フィジデさんって?」
「フィジデさんはここの台所を預かっている人で、料理主任なんです。多分、喜んでやらせてくれるとは思うんですけど…」
広い神殿の廊下から、少し細い廊下へ入る。
どうやらその少しばかりみすぼらしい区域が、僧侶たちの居住区域のようだった。
神殿の裏の方へ進むと厨房があり、そこに入ると物凄い熱気が押し寄せてきた。
熱源は大きな鍋とパン妬き窯のようだ。
鍋の湯気の向こうに、大柄な男が立っていた。
「フィジデさん、お手伝いに来ました」
ルナは声を張り上げるようにして言った。
そうでもしないと聞こえないくらい、ここは音に満ちていたのだ。
「その声はルナか? ああ、ありがとう。悪いけど、この鍋をかき混ぜててくれ。…っと、誰? 客かい?」
「はい。ソル王子殿下です」
「王子! へーえ、何? わざわざ俺の料理を食べに来たとか?」
陽気に笑うローブ姿のコックにソルは笑って、
「まあ、そんなとこ」
「ははっ、ありがとよ」
嬉しげに言って、フィジデは窯の方へ行った。