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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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くれなずむ <その2.対決!野球部>

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 というより、この冶月フィラがこういうことを口走ると大抵が現実のこととして起こる。
この女は、”そういった事実が無くても、火のない所から煙をあげるという手管に長けている”。
 これは周知の事実としてこの学校では広く知られていることだった。
冶月フィラは、自分の目的を達成するためなら、あらゆる手段を節操無く講じてくる。
 自身の目的の障害となるモノは、全力で排除する。
通説の流布をひっくり返すカウンターインテリジェンス。
事実の捏造。人心操作。扇動による悪評の伝聞。
手をかえ品をかえ、様々な手段で、じわりじわりと相手の首を真綿で絞めつけるようにして、
自身の障害となる人間を陥れ排除する。
 それが、冶月フィラという女のやり口であった。
フィラに噛み付いて、その仕返しに情け容赦ない陰徳の手口の犠牲になった人間の数は計り知れない。

 「まー、”あくまでの話”だから、それほど、
気にしなくてもい・い・ん・だ・け・どー。
ていうか、素人相手に、野球部が野球勝負をばっくれるなんて、
チキンもいい所だと思うんだけどねー。
明日から、学校中でなんていわれるかしらね?」
 フィラの事実上の脅迫とも受け取れる口上は、確実に真田の精神に
ダメージを与えているようだった。
 これだけけしかければ充分だろう。
最も、他にもつつけば痛いネタもあるのだが。

 フィラは同じクラスメートである学友の真田の性格を把握していた。
プライドが高く、熱血漢で負けず嫌いの彼のことだ、こうまで言われて引き下がったりはしないはず。
そして、自分が言った言葉の意味を理解できないほど頭も悪くはない。
断るようなセリフをはけば、さっき言ったとおりのことを実際に行動に移すだけだ。

 「…いいだろう。いいだろう!俺たちは脅迫には屈しないぞ。
その条件で勝負しようじゃぁないか。
素人相手に負けるほどウチの野球部は落ちぶれちゃあいない。
春の大会で全国ベスト4にまで上り詰めた、俺たちの強さを見せてやろうじゃないか!」
「話がわかって助かるわ。試合成立ね。
それじゃ、勝負は一週間後の放課後、グラウンドでね」
「了解だ。まぁ、せいぜい良い面子をそろえておけよ、生徒会」
そういって、静かながらに怒りを湧き上がらせた様子で真田は生徒会室を後にしていった。

 真田が去り、しんと静まり返った生徒会室でクレナが目を細めて、ため息混じりに言った。
「フィラ姉さん…・、相変わらずの悪党っぷりだね」
「まぁねー、そんなに褒めないでよー。うフフー」
先ほどまでの凄みのあった態度とは打って変わって、へらへらとした様子で答える
”暗黒女帝”冶月フィラであった。

 そして、一週間後。

対決の時がやってきた。