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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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くれなずむ <その2.対決!野球部>

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 校内のグラウンドにあるダイヤモンドを中心に、そこには多くの人だかりが出来ていた。
いまから行われる、生徒会と野球部の試合を見に物見遊山気分で見物に来た生徒達が
ダイヤモンドを中心に輪を作るようにして遠巻きに群がっている。
しかし、そこには試合開始を待ちわびるざわめきと、あるはずの喧騒はなく、
異様などよめきが場を支配していた。 

 マウンドに立つ、ピッチャー。

 それぞれの守備ポジションについた野球部員たち。
生徒会側のベンチに座る、クユリー三人に、遊園地マスコットの着ぐるみを着た二人。
 
 呆気に囚われた表情で、口をあんぐりと開け、バッターボックスを
見つめる、キャッチャー。
 その目線の先には、バッターボックスにそびえたつ機動戦士もとい、
メイド服を着た望月ミノルの姿があった。
しかも、少し動けば下着が見えそうなタイトミニのスカートを手で押さえつつ、
顔を真っ赤にしている。
 あまりにもカオス過ぎるこの状況に、誰も彼もがこの異様な空気の泥沼に飲み込まれていた。

 「フフーふ。いやぁ、皆度肝を抜かれているようねー。
冶月フィラ、プロデュースのこの試合、大成功の予感がするわ」
「いや、ただ単に皆あきれてるんだよ」
勘違い甚だしいコメントを催すフィラに突っ込むクレナであった。
 「しかし、メイドコスなんて、よくやってくれたよねぇ〜会長」
「デ・ガッシュのライブチケットおごるって言ったら、ふたつ返事でOKしたわ」
(それか…!)

 デ・ガッシュ。ミノルが愛して病まない、インディーズのデスメタルバンドである。
入手困難で知られるそのライブチケットを進呈すると言ったら、
ミノルはあっさりと要求を呑んでくれたのだ。
難しそうな堅物に見えて、意外とお手軽なお人である。
 「そんなのに、釣られ…・ク、クマーッ!ってなもんよ。一本釣りだったわ」
フフンと、得意げに語るフィラ。
「一体なんの話だか…」
まったく、ストライクゾーンのせまい話は勘弁していただきたい。

 「ともあれ、ミノルがああいう格好をしてくれれば、
ピッチャーの目もひけるというものよ」
 フィラが立てた作戦とは、女の武器を使って男の下心を利用した破廉恥なものもあれば、
とんでもないイリーガルな手段で、相手の不意を突いてスキを作り、
勝利を手にしようという卑劣なものだった。
ミノルに限った話ではないが、生徒会側のメンバーには何かしらそういった作戦を
実行する手段を持たされている。

 しかし、パンチラ作戦とはちょっとあんまりである。
少しばかり男をバカにしているのではなかろうか。
 だが、年頃の男の子というのは悲しい生き物なのだ。
頭では理解していても、本能が反応してしまう。
そういう確信がフィラにはあった。

 「それだけじゃないわ。ミノルのブロマイドはもちろん、
画像をプリントしたマグカップやタペストリーといったグッズを
校内のファン連中相手に、叩き売るってわけよ」
「さすがフィラ姉さん。アフタービジネスも完璧だね」
試合も有利(?)に進んで、グッズでお金も儲かる。
一石二鳥の隙を生じぬ二段構えの策であった。

 「プレイボールッ!」
二人のうだつの上がらないやりとりをよそに、審判が試合開始を告げた。
「大丈夫かな、会長。さっきの様子じゃ、とてもバットなんて振れたもんじゃ…」
「いや、姉さん。よく見なよ」
フィラの一つ下の弟、椎駄が「そうではない」と傾注を促した。
 そこにはバッターボックスに立ち、凛とバットを握り構えるミノルの姿があった。 
さきほどまで恥ずかしさで真っ赤にしていた顔を、きりと引き締め、
目の前のピッチャーの動きに集中している。
 さすがは、望月ミノル。フェンシングと太極拳で鍛えられた集中力と精神力は伊達ではない。
今の彼女なら、どんなコースでも打ち抜くように思える。

 「すごい、集中力だ…!」
「うん…!」
二人はその気迫におもわずゴクリとつばをのみこんだ。
 (でもなぁ…)
その格好がメイド服というのが、ちとしまらない。

 ピッチャーが、投球のポーズを構え。
ボールがその手から、投げられた。
 コースは、ど真ん中。ストレート。
ミノルは、スウィングモーションを取り、地面を踏みしめ、
バットを振りかぶろうとして、はっとなり踏みとどまった。

 ふわりと、めくれあがるスカート。
あらわになる太もも。そして…
投球の直前、ピッチャーの手元が狂った。
「ボォーッル!」
悲しいかな男の性。
やはり、スカートの中に目が向いてしまっていたのであった。

「ふっ、ちょろいわね」
勝ち誇った様子で、フィラはほくそ笑んだ。