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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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くれなずむ <その2.対決!野球部>

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  真田は改めて佇まいを直してクレナへと向き直り、
「どうだろう、キミ。部長の了解もとってある、野球部のマネージャーに…」
「やです!」
速攻で拒否の意を表明するクレナ。

 「いや、まだ全部いってないんだけどねぇ…」
「野球部のマネージャーになってくれってことですよね?
それでしたら悪いんですけどお断りです。
私にはクラス委員や文化祭の実行委員の仕事もありますし、
これ以上はとても兼業なんてできません。
こう見えても、多忙なんですよ私」
 矢継ぎ早に反論するクレナ。
正直言って、これ以上の執務の兼ね合いは身が持たない。
好きでやっていることだが、勘弁だ。
マジで死ぬ、死に値する。

 「うーん、そうかぁ、だめかぁ〜。
昨日、キミに投げつけられたボール痛かったんだけどなぁ〜」
 一瞬、クレナはぎくりとした。
昨日のことに罪悪感がないとは言い切れない。
そういわれれば、後ろめたい気持ちが首をもたげてくる。
 「…そりゃぁ、えっと真田さん…でしたっけ?
あんなこと言われれば、女子は怖がりますよフツー」
「いやアレはちょっとテンパっててー。や、なんていうか間違えたというか…。
ホントは”素晴らしいフォームだね”って言おうとして…」
「ちょッ--------!”フォーム”と”オッパイ”どこもあってないじゃないすか。
どうしたら、そんな風に言えるのかくわしく聞きたいぐらいっすよ!」
 まったくである。
テンぱるとかそれ以前の問題だと思う。
皆そう思う、誰だってそう思う。

 「確かに、全ての非は俺にあるかもしれない。
でもだからといって、人にボールを。
しかも硬式のボールを投げつけるのはどうかと思うのだが。
暴力に訴えず、口で反論の一つでもすればよかったのではないのかね?」
それは、正論だ。
これに関しては、両者痛み分けであろう。

 「まぁ、そうですけどぉー…。あれは、私が悪かったです…。まぁ、その、ごめんなさい」
「いやぁ、理解を示してくれてなによりだ。ならさ?…ねぇ」
「でも、それはやでーす」
 だが、五十歩百歩、それ以上踏み込まれることを容認するクレナではなかった。
受け入れがたいことに対しては、決して譲歩はしないのがクレナの信条である。
ましてや、相手の弱みに漬け込んで要求を突きつけるような、
脅迫めいたやり方は気に入らない。
「だって、それとこれとじゃあ話が別じゃあないですか。
私が野球部に入らなきゃならない理由にはなりませんよッ!」
 
 「いいんじゃない、入ってあげればー」
と、間の抜けた声が二人の口論の間に割って入った。
いつからそこにいたのか、ウェーブのかかったセミロングヘアの女子生徒がいた。
その少女は、扉の袖口に寄りかかって腕組をし、静かにたたずんでいた。
 野暮ったそうな、それでいて何かを見透かしてるかのようなじとっとした目つき。
一見とぼけていそうで、つかみ所がなく、器量の計り知れない風体の少女。
彼女こそ羽燕高校生徒会副会長、冶月フィラだった。

 フィラは眠たい目線をクレナと真田の両者に向けてから、淡々とこう続けた。
「でも、タダっていうのもつまんないでしょ。
野球部と生徒会で野球対決をするっていうのはどう?」
「試合か、悪くないな。野球ならなおさらだ。その勝負、受けてたとう!」
「OK、成立ね。クレナは生徒会あずかりってことで、生徒会のメンバーとして
試合をしてもらうわ、いい?」
「ちょっとフィラ姉さん、ナニ勝手にいっちゃってんのさー!」
そういってクレナはフィラに詰め寄った。
 話が自分の意に介さず勝手に進んでいるこの状況は非常にまずい。
これはよくない流れだ。
そう、これは”彼らのためにも実によくない”。

 クレナは、フィラの耳元近くまで寄っていって、
「よくないってこういうの」
「勝てばいいのよ、勝・て・ば」
「いや、そうじゃぁなくってさぁー…ごにょごにょ」
 クレナはフィラの耳元に近づいて、ぼそぼそと耳打ちした。

 (野球部といえども、私ら(生徒会の面子)と野球でやりあったら、”タダ”ではすみませんぜ?)
(ふふ、いいんじゃぁない?連中も身の程を知るいい機会よ。んーふっふー。)
(なるほどぉ〜。にょほほー、フィラ姉さんも人が悪いですなぁ〜)
(まぁねー)
どす黒いオーラを放ちながら、なにやらただ事ではないこと話し合っているクレナとフィラ。
 まるで、陰謀を画策している秘密結社の幹部のようである。
しかし、只ではすまないとは一体どういう意味なのであろうか。