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私のやんごとなき王子様 三島編

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後日談


「小日向君、これを」

 そう言うと三島君は私に一冊の大学ノートを手渡した。

「有難う!」

 私は笑顔でそれを受け取ると、中も見ないでサッと鞄に忍ばせた。

「それでは」
「うん!」

 それだけの言葉を交わすと、三島君は自分の席へと戻って行った。
 そんな私達の様子を肩越しに見ていたさなぎが、鞄に視線をやったまま私の背中にもたれかかって、いつもの元気な調子で尋ねてきた。

「何なに〜? 美羽、最近三島っちとちょーノート交換してんじゃん? 受験に向けて最後の追い込み?」
「うん、まぁそんなトコ」
「いいなぁ〜〜。成績優秀の三島っちのノート! お願いだから私にも見せて〜〜!」
「だぁめ! さなぎには私が教えるから」
「うぅ〜〜、でもそれでも有難い〜〜!」

 さなぎは泣きつくふりをしながら私の肩に顔をうずめた。まったくもう、さなぎったら。


 大成功を収めた演劇祭も終わり、季節は冬――
 私達三年生は受験を間近に控え、独特の空気の中で過ごしている。

 私と三島君は毎日のようにノートを交換しているのだけど、これはいくらさなぎの頼みとはいえ見せるわけにはいかないのだ。

 だって――――

「おー、お前ら授業始めるぞー、席つけーー」

 元気に教室に入ってきた真壁先生の声で、私は脳みそを授業モードに切り替えた。
 このノートは家に帰ってからの楽しみにしよう。
 国語の教科書を開きながら、自然に笑みがこぼれていった。