私のやんごとなき王子様 三島編
今日も何事も無く一日が終わった。
お風呂から上がると、私は三島君から受け取ったノートを鞄から取り出す。
一見すると何の変哲もないただの大学ノート。
でもこれはね――――
――――演劇祭が終わり、三島君に告白された次の日。
放課後の人気のない教室で、三島君に一冊のノートを手渡された。
「三島君、これは?」
「その……清い交際は交換日記からだと思うのだが……どうだろうか?」
そう言って赤面した三島君。
私はそのノートを笑顔で受取り、それ以来私と三島君は毎日交換日記を続けている―――
このノートも実はもう三冊目なのだ。
「今日はどんな事が書いてあるかな?」
ワクワクしながらページをめくる。
『もうすぐ冬休みだな。受験生には休みなど無い、最後の山場となるだろう。だが』
その後は何度も書き直したのが伺える。
『だが――もし迷惑でなければ、クリスマスは一緒に過ごせないだろうか?』
三島君らしい整った字でそう綴られているのを見ると、私の心臓は一気に高鳴り始めた。
三島君と一緒にクリスマスが過ごせたら、こんなに嬉しい事ないよ!
私はカラーペンを取り出すと、大きなハートマークと共に思いを書きだす。
『もちろん! OKだよ! 三島君と過ごせるなんて嬉しい!』
三島君の綺麗な黒い文字と、私の少し丸みを帯びたカラーペンの文字が交互に綴られた大学ノート。
なんの変哲もなさそうなこのノートは、私と三島君の宝物なの。
この交換日記が五冊終わったら、次は交換メールに挑戦したいな。
そしてその次は――――
そんな風に三島君の事を思いながら、私は今日も眠りにつく。
あなたの事を毎日思う事が、こんなに幸せだなんて思わなかった。
三島君、ずっとずっと大好き。
私のやんごとなき王子様 ――三島編―― 了
作品名:私のやんごとなき王子様 三島編 作家名:有馬音文