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私のやんごとなき王子様 三島編

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*****

 そんな私の祈りなど必要もないほどに舞台は完璧だった。
 演技も衣装も背景も、音楽だって照明だって――何もかもがおよそ高校生の演劇のレベルを超越していた。

 物語の最後、美しい白鳥達の姿が湖に舞う。
 その眩しさに目がくらむ思いがした。

 幕が下りると会場中が割れんばかりの拍手に包みこまれた。
 拍手の音がそのまま私の心に充足感として響き渡った。

 ――終わった。全て……。

 高校生活最後の演劇祭のその全てが今――終わったのだ。



*****

 演劇祭終了後――マスコミ関係者や一般の観客、そして生徒といった面々に帰宅を促し、気付けば辺りは夕暮れに染まっていた。

 荷物を取りに教室に戻ると、案の定そこには誰もいなかった。

「ふーっ、終わったぁ」

 静かなオレンジ色の教室で、私は大きく息を吐いた。
 滞りなく実行委員としての仕事も、最後の最後まで終える事が出来た。全身を安堵感と心地よい疲労が包み込んでいる。
 そっと窓の外を見る。さっきまでの慌ただしさがまるで嘘のように落ち着いた世界がそこにあった。
 誰にでも無く微笑んで、そっと鞄を手に取ったその時――

「お疲れ様」

 突然かけられたその声に、思わず顔をはね上げた。

「三島君……」

 教室の入り口には三島君が立っていた。

「三島君の方こそ、本当にお疲れ様!」

 一瞬驚いた後、私は元気よくそう伝えた。
 そう、間違いなく実行委員の中で一番大変だったのは三島君だ。
 三島君がいたから――私達は迷うことなく進んでこれた。

「有難う」

 私の言葉に三島君もそっと微笑んだ。

「ところでどうしたの? 何か忘れもの?」

 私がそう訊ねると、三島君は急に真剣な面持ちになって、こちらへと近付いてきた。