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私のやんごとなき王子様 三島編

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「会長、ご一緒してもよろしいですか?」
「水原君……」

 水原さんは真っ直ぐに三島君を見つめていた。

「すまない、俺は小日向君と――」
「会長、お返事を聞かせて下さい」

 何かを言いかけた三島君の言葉を制するかのように、水原さんが声を被せた。

「……それは」

 三島君が何かを言おうとした瞬間、再び大きな花火が上がった。

 ドーーーン!!

 大きな音が鼓膜を揺らす。三島君がなんて言ったのかが聞き取れなかったけど、私がここにいてはいけない事だけは分かった。

「あ、私ちょっと向こう行ってるね」
「小日向君、問題無い。君もここに居てくれ」
「でも」

 戸惑う私を無視するかのように、水原さんが凛とした眼差しのまま口を開く。

「会長、私は会長の事が好きなんです。どうか私と……」
「水原君、すまない」

 水原さんの言葉を受けると、三島君は思いきり頭を下げた。

「三島君……」

 その真摯な姿勢に私は思わず目を奪われた。

「すまない、水原君。君の気持ちには答えられない」

 頭を下げたままの三島君がそう言うと、水原さんの瞳にみるみるうちに涙が溢れだしていく。その黒い瞳の中に幾筋もの光の花が咲いては散っていく。

「分かりました。会長、有難うございました」

 そう言うと水原さんもまた一礼をし、宿舎の方へと駆け出していく。

「三島君……!」

 とてつもなく動揺していた。水原さんが目の前で振られて、一体どうしたらいいのか分からない。

「すまない、小日向君。せっかくの花火だったのに」

 そんな事言いたいんじゃないよ。だって――

 三島君の思いと水原さんの思いが私の心の中で交錯する。
 私は……私の思いは……

「ごめっ……私、水原さんの事……見てくるね!」
「小日向君!」

 駆け出した私に三島君の声が投げられた。
 その声に追いつかれないように全力で大地を蹴りあげる。

 何をしているんだろう。何がしたいんだろう。
 三島君の思い、水原さんの思い――――その二つを考えると、そこに自分の思いを割り込ませる事なんて出来なかった。

 ただ――

 水原さんが心配だった。