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私のやんごとなき王子様 三島編

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 三島君は夕食後に部屋まで迎えに来てくれた。
 さなぎはとっくに米倉君と出かけていなかったけど、私は何だかドキドキしっぱなしだった。隣りを歩く三島君の話し声にもどこか集中しきれなくて、何だかフワフワとした浮遊感の中にいる感じ。
 そんな夢見心地の中、三島君に導かれるまま歩いていた。

「この辺りなら人も少ないし、花火も見やすいはずだ」

 そう言って三島君が案内してくれたのは、皆がいる海岸沿いから少し離れた所にある小高い丘だった。

「本当だ、穴場スポットだね」

 辺りには数人の生徒しかいない。それでいて見上げる夜空はどこまでも広かった。

「こんな場所、なんで知ってるの?」

 私が問いかけると、三島君は照れ臭そうに微笑んだ。

「合宿の最終日に花火があることは知っていたし、実行委員として奔走している間も、どこかいい場所は無いかと探していたんだ」

 三島君でもそんな風に考えるんだな――思わず私も笑みがこぼれる。
 だって仕事中は仕事の事しか考えてないんだろうな、なんて思ってたから。

「ほら、そろそろ始まるぞ」

 照れ隠しのように三島君が言ったのとほぼ同時に、近くの海面からシュルシュルと第一発目の花火が打ち上がった。

ドーーーン!!

 大音響を響かせ、心臓の内側から体全体を振るわせるような振動が走り抜けた。
 夜空に弾けた大きな色鮮やかな花火に、一斉に喝采が起こる。

「わあ……綺麗」
「ああ……」

 私と三島君は空を見上げながら、自然に言葉を零す。
 心から何かを美しいと思ったり、感動したり――この合宿は私にとって一生の思い出になるような出来事がいっぱいだ。
 高校生活最後の演劇祭、どこを担当するかで本当に迷ったけど、実行委員にして良かったと心から思える。

「これだけ近いと迫力も凄いな」
「うん」

 真剣な眼差しで夜空を見上げる三島君の横顔が、私の網膜に焼き付いていく。
 次々と重力に逆らって空へと投げ出されて行く花火の雨の中で、私は何とも言えない幸せを感じていた。ずっとこのままこうしていたいな――

「会長」

 ふいに聞こえたその声に、私は思わず顔を弾かれた。振り向くとそこには水原さんが立っていた。