私のやんごとなき王子様 三島編
今日は合宿の実質最終日。明日にはまたフェリーに乗って学園へと戻る事になっている。
私達実行委員は明日の船上での確認作業や、各担当の運搬等の打ち合わせに1日を費やした。
一通り打ち合わせも終わった頃、三島君が私の元へとやってきた。
「お疲れ様」
「ああ、お疲れ」
お互いの顔にホッとした表情が浮かんでいる。まだ学園に戻ってからも仕事が残っているとはいうものの、無事に合宿が終わりそうでそれが一先ず嬉しいのだ。
二人して労いの言葉を掛け合った後、三島君が思い切ったように口火を切った。
「その……今晩は花火が見れるのだが……」
「うん、聞いた聞いた〜。大々的にやるみたいだね〜!」
「あ……ああ……」
口ごもる三島君をじっと見つめる。
三島君は私から少しだけ視線を外した後、言葉を続けた。
「あー……良かったら一緒に行って貰えないだろうか?」
「え!? 私でいいの?」
「勿論だ」
まさか三島君に誘って貰えるとは思っていなかった私は、反射的に答えてしまった。
けれどそんな私に向って、三島君は本当に嬉しそうな笑顔を向けてくれている。
「嬉しい……!」
「そうか……良かった。それじゃあ、後で小日向君の部屋まで迎えに行く」
「うん、待ってるね!」
笑顔で別れを告げ私の前から去って行く三島君を見送り、私は心が温かくなっていくのを感じていた。
三島君と一緒に花火を見られるなんて、思ってもみなかった――
作品名:私のやんごとなき王子様 三島編 作家名:有馬音文