私のやんごとなき王子様 三島編
「それじゃあ早速質問を〜」
「ここが終わったら次は風名君の方、ちょうど時間合うだろ?」
「バッチリです」
「おい、利根君はどうなった? 桜亜里沙嬢は?」
勝手な事を口ぐちと発言する大人達。取材って言っても……こんなの一体どこから話をしてけばいいって言うのよーっ!
軽くパニックになりそうな私の耳に涼やかな声が響いた。
「失礼、こちらにも都合がありますので、なるべく簡潔に済ませて頂けませんか?」
三島君だった。彼はたくさんの大人たちやカメラにも怯むことなく、真っ直ぐに声を発していた。
「ああ、そうだよねー、ごめんねー。じゃあ早速何だけど」
「今回の演目を白鳥の湖にしたのは何か理由があるのかなー?」
「風名玲君と桜亜里沙さんという今芸能界でも注目の二人が主役をやるというのは、やはり最初から決まってたんですか?」
「星越学園には芸能活動をしている人が多いですが、この劇の出演者も全員そう言った関係の仕事をしている人たちだったりします?」
「与えられた期間が一週間しかないのに毎年大成功を納めているのは、学生ではなくプロが裏方をやっているという話を聞きましたが、本当かな? もし本当なら学園は嘘を吐いていることになりますよね〜?」
なっ、なんなのーー!?
質問すると決めるやいなやの質問の嵐にまたも私はパニック状態。こ、こんなのって……。
「演目を白鳥の湖にしましたのは、動きの美しさに着目したからです。今回は演出担当の者がバレエのようなしなやかな動きも取り入れたいと、たっての希望がありましたので。数々のバレエの名作から白鳥の湖を選んだのは、それが最も生徒から人気があったからです」
目眩すら覚えそうになった私の横で、三島君がスラスラとまるで何かを音読しているかのように受け答えしていく。
「主役につきましては、王子役の風名君の方は早い段階から投票で決まっていましたが、オデット役はギリギリまで未定でした。2日前に推薦と投票で桜さんに決定した次第です。また演劇の出演者は全員芸能関係者かといった質問ですが、答えはノーです。今回、初めて演技をこなすような者もいますので、どうか温かい目で見守って下さると有難いです」
すっ、すごい! 私は思わず目を見開いて三島君を見つめてしまう。
作品名:私のやんごとなき王子様 三島編 作家名:有馬音文