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私のやんごとなき王子様 三島編

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「ただの船酔いだな、酔い止めをだそう」
「はい……」

 そういうと鬼頭先生は酔い止めを取りに救急ボックスの方へと向かう。

「小日向君……」

 横になった事で少し落ち着いてきたのか、三島君が私に声をかける。

「体調管理に気をつけるようになどと言っていた俺が……こんな失態を……すまない」

 余りに辛そうなその表情が心の奥に刺さるような気がした。

「そんな事無いよ、全然」

 つとめて明るく言ったつもりだけど、完璧主義な三島君は自分を責める事をやめないのかもしれない。

「……小日向君、俺はもう大丈夫だ。皆の所へ戻ってやってくれないか?」
「でも……」
「小日向君が皆を見てくれていると思うと……安心できる」

 確かに私がこのままここに居ても、三島君の容態が回復するのが早くなるわけでも無い。だったら――三島君が望むとおりに、私は実行委員としての責務を果たした方が彼の心が軽くなるんじゃないだろうか。

「そうだぞ、小日向。お前がここにいてもハッキリ言って何の役にも立たんからな」

 至近距離の背後から聞こえた意地悪な声。

「三島、酔い止めだ。飲みなさい」
「はい」

 鬼頭先生から水の入った紙コップと酔い止めを受け取り、三島君はごくりとそれを飲み込んだ。

「あとは俺に任せておけばいい。行け」
「はい……。じゃあ三島君、何にも心配いらないからね! 私に任せて!」
「余計に心配になるな、そのセリフ」
「鬼頭先生には言ってません!」

 私と鬼頭先生のやりとりを聞いて、三島君がクスリと笑った。

「頼んだよ、小日向君。本当にすまない」
「ううん、早く良くなるのを祈ってるね!」

 そう言うと私は医務室を出た。


 外に出ると進行方向のその先に、到着地である島がぼんやりと見えて来た。 
 あ〜あ、お昼食べ損ねちゃった……でもそんな事言ってられない。これからもっともっと忙しくなるぞ! だから三島君、早く元気になって!

 そして私は思いっきり背伸びをして息を吸い込んだ。