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私のやんごとなき王子様 三島編

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 フェリーに乗ってからは実行委員として各担当のリーダー達に、何か困っている事はないかを聞いて回る事になった。全体を見て、的確なサポートをする。それが私の仕事。

メンバーは揃っているか、具合の悪くなった人はいないか、バタバタと走り回って気付けば昼近くになっていた。

「はあ、疲れた……」

 やっと落ち着いて自動販売機でジュースを買うと、私はさなぎの姿を探すことにした。
 お昼を一緒に食べようと約束していたのだ。
 しかしどこにいてもすぐに見つけられる位元気のいいさなぎが、どういう訳か見つからない。

「おかしいな。いつもなら1キロ先にいても分かるんだけど」

 辺りを見回していると、ふと視界に入った人影。
 こんな所にいるはずは無い人なんだけど……。
 あれ? え? あれってもしかして……?
 私は急いで通路の端で柵に持たれて項垂れる三島君の側に駆け寄った。

「三島君、どうしたの?」
「……こ、小日向君か。どうした、何か問題でもあったか?」

 いや、問題がありそうなのは今の三島君そのものなんだけど……。

「問題っていうか……」

 思わず言葉に詰まってしまう。
 いつもの背筋がピンと伸びた彼からは想像もつかない程に項垂れ、そして顔面はというとただでさえ青白い顔が、いつもにも増して蒼白だ。

「三島君……、もしかして船酔い? てゆーか船酔いだよね?」
「も……問題ない」

 だから問題無いって言う顔じゃないんだってば。

「三島君、鬼頭先生の所に行こう? 私も一緒に行くから」
「いや、そこまでは……」
「ダメだよ、三島君! 三島君は実行委員の要なんだから! これ以上悪くなったら皆困っちゃうよ!」

 私がそう強く言うと、三島君は眉間に皺を寄せながらも、柵に持たれていた体を起こした。

「こんな事で……情けない……」

 相当に気分が悪いのか、涙目の三島君に肩を貸しながら、私達は鬼頭先生の元へと向かった。