私のやんごとなき王子様 三島編
「小日向君、遅いぞ」
改札を抜けると、そこには三島君が私を待ち構えていた。
「えっと、集合時間までにはまだ20分あるはずなんだけど……」
「俺達は実行委員なんだぞ? やる事は山積みだ。早速各項目の出発前最終チェックを行うぞ」
「あ、はいっ!」
そっか、実行委員はもっと早く来なくちゃいけなかったのか〜。言ってくれればちゃんと早起きしたのにな。
「頑張ってね、美羽!」
「うん、有難うさなぎ!」
ちょっと落ち込み掛けた気持ちを、さなぎの激励で持ち返した私は、忙しそうに足早に歩く三島君の後を追った。
後ろからチョコチョコと追いかける私を見て、一瞬三島君が笑ったような気がした。
「小日向君、演劇祭まで大変な日が続くだろうが、お互い頑張ろう」
「はいっ!」
何故か敬語で返事をして、私達は最終チェック作業に入った。
一通りのチェックが終わると、校長先生の挨拶が始まると言うので、生徒達は全員フェリーの前に整列した。
目の前にある大きなフェリーは青空をバックに悠然と佇んでいる。
毎年理事長がチャーターしてくれるこの大型フェリーに乗って、理事長所有の島へ向かうのだ。
港に勢揃いした我が星越学園の全校生徒。とは言っても生徒数が少ないうちの学校だから整列した様子に圧倒されるってことはないんだけど。
そんな事を考えていると、校長先生の挨拶は既に終わろうとしていた。校長先生の挨拶はいつもすごく簡潔で、長ったらしくないから好きだ。
最高の演劇祭になるよう、全校生徒力を合わせて怪我が無いように頑張って下さい。という言葉を最後に、乗船が始まった。
作品名:私のやんごとなき王子様 三島編 作家名:有馬音文