私のやんごとなき王子様 利根編
後日談
俺はやっと、自分の気持ちを好きな人に伝える事が出来た。
彼女はいつも元気で、その笑顔を見ているとすごく楽しくなる。そんな素敵な子。
最初はちょっとした嫉妬心から興味を持っただけだったけど、気付いたら目が離せない子になっていたんだ。彼女は俺がこう言ったらどんな言葉を返してくれるんだろう。と考えるようになって、気付けば彼女の事ばかり考えるようになっていた。
ああ、好きってこういう気持ちなんだなぁって、初めて分かった。
高校生活最後の演劇祭で、俺は思い切って彼女を同じ担当をしないかと誘った。もちろんいい返事がもらえる自信は無かったけど、どうしても誘わなきゃいけない気がしてたんだ。
だって、玲が彼女を誘うつもりだって聞いたから。
俺は卑怯だ。
幼なじみを元気づけてくれた彼女に嫉妬していたくせに、好きになったら幼なじみにも渡したくないと思った。だから、去年偶然同じ委員で少し仲良くなった事をさりげなく玲に自慢したりしてた。
演劇祭で思いも寄らない形で彼女と共に時間を過ごし、好きだという気持ちが更に強くなった俺は、演劇祭が終わった後彼女を捜した。
生まれて初めての告白で信じられない程緊張していたけど、彼女からの答えはそんな俺の緊張を一瞬にして打ち消してしまう程の嬉しいものだった。
こんなにも幸せだと思った事は無かった。
平気で嘘を吐いて人を騙し、蹴落とす事ばかり考えている俺の周りの人間とは違う、俺を一人の人間“利根華月”として見て接してくれる彼女を手に入れる事が出来た。
絶対に離さない。
そう、強く誓った……
あれから7か月。俺と彼女は星越学園を無事卒業した。
作品名:私のやんごとなき王子様 利根編 作家名:有馬音文



