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私のやんごとなき王子様 利根編

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「ちょっと休憩しようか……あそこのお店でお茶でも飲もう」
「そうだね、喉乾いたし冷たいのが飲みたいな」

そう話して向かい側の道路にあるカフェへと体を反転させると、

「危ないっ!」
「わっ!?」

 突然脇道からバイクが飛び出して来た。
 私はあまりに突然の出来事に体が硬直して、目の前に迫って来たバイクとぶつかる覚悟で思いっきり目をつぶった。
 次にぐいっとすごい力で体が傾き、何かにぶつかる。ふわりと利根君の甘い匂いがしてきて、なんだか利根君に包まれているような感覚になる。
 ああ、合宿直前に事故で入院なんて、私はなんてついてないんだろう。いや、死んじゃうのかな? きっとギリギリまで担当希望を決められず、色んな人に迷惑をかけた罰が当たったんだ。でも最後に利根君の優しい香りに包まれて死ぬなら、それはそれでいいかもしれない……


――――――って、あれ? 痛くない。いや、衝撃が強すぎて痛みを感じてないだけ?


 ぐるぐると真っ暗闇の頭の中でそんなことを考えていると、

「……さん、小日向さん! 大丈夫!?」
「―――えっ?」

 私は頭のすぐ側で聞こえる声に、ゆっくりと目を開けた。

「あ」

 目の前には利根君の綺麗な顔があって、心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
 ああ、利根君。本当にあなたは優しいんだね。おまけになんて美しい顔をしているんだろう。
じゃなくて!! 顔っ! 近い近いっ!
 漸く状況を把握した私は慌てて利根君から離れようとしたけど、しっかりと利根君が私の体を抱き寄せていて逃げられなかった。

「とととっ利根君っ!?」

 思わず口がどもってしまう。

「良かった……気を失ったかと思った」

 そう言ってすごく安堵したようにため息を吐くと、漸く体を解放してくれた。
 どうやらバイクとぶつかりそうになった私を引っ張って助けてくれたようだ。

「ご、ごめん。助けてくれてありがとう……」

 私は恥ずかしさで熱くなった顔を両手で挟み、頭を深々と下げた。