私のやんごとなき王子様 利根編
無事校門を出た所で利根君と合流すると、私達は手芸店へと向かった。
私もたまに買いに来るお店だったから、利根君が欲しいっていう材料や生地の場所へスムーズに案内出来た。
たったそれだけでちょっと役に立てたかも。なんて思っちゃう私は志が低いかな。
買い物は細々した物ばかりで大きなものはほとんどなかった。
おかげで二人でも余裕で持てる位の荷物だったんだけど、何せ買い揃える物の種類が多かったおかげで手芸店だけじゃなくて小物店や文具店などあちこち回る事になった。そのため、全部の買い物が終わった頃にはすっかり疲れてしまっていた。
「ごめんね、あちこち連れ回しちゃって。疲れただろう?」
「ちょっと疲れたけど、すごく楽しいよ……でも利根君って色んなお店知ってるんだね。さっきの和物の小物店、すっごく気に入っちゃった!」
「あそこの店は俺の母の気に入りでね。うちは着物を着る事が多いから小物なんか良く買うんだけど、大抵あそこの店で買うんだ」
「へえ、そうなんだ。利根君のお母様のお気に入りのお店かあ……奥のショーケースに入ってるかんざしとかはびっくりするような値段だったけど、巾着とか着物の切れ端なんかは種類が豊富だし値段も手頃で、見てて楽しかった。また行きたいな」
先ほど行った店内の様子を思い出しながら私が言うと、利根君が笑った。
「小日向さんに気に入ってもらえて嬉しいよ。今度日傘を入荷するって言ってたから、興味あるならまた見に行く?」
「うん、行きたい!」
ああ、本当に利根君と一緒にいると穏やかな気持ちになるな。
笑顔の利根君につられて笑ってしまう。
人間怒ってる人よりも笑ってる人の方が長生きするって統計があるくらいだもんね、笑顔って心身共にいい影響を与えるんだ。
だから利根君は皆に好かれるんだろうな。
作品名:私のやんごとなき王子様 利根編 作家名:有馬音文