私のやんごとなき王子様 利根編
8日目
昨日、劇出演者の一人が倒れて、急遽代役が立てられる事となった。
おかげでその子の衣装を担当していた利根君は代役の子に合うよう衣装をリサイズしないといけないらしく、昨日も遅くまでのこって作業をしているみたいだった。
私は小物を自室に持ち帰って、さなぎと楽しく作業の進行具合の話しをしながら作ってたんだけど、利根君ちゃんと休めたのかな? 心配。
「ねえねえ、美羽」
「なあに?」
部屋を出る準備をしていると、さなぎが遠慮がちに声を掛けて来た。
「利根君、なんか疲れてるっぽくない? 大丈夫?」
さなぎも今朝の朝食の時に見かけた利根君の姿に、私と同じ事を考えていたみたい。だって本当に笑顔に力がなかったもんね。
「う〜ん。ハプニングがあったから、遅くまで作業してたのかも。後でさり気なく利根君と話してみるよ」
「お願いね。利根君ファンとしてはやっぱり心配だもん」
「分かった」
「じゃあ、またね。美羽も無理しないでよ!」
そう言って部屋を出て行くさなぎに、私は苦笑する。
「私は大丈夫よ。お互い仕事頑張ろうね!」
私の言葉に拳を振り上げて返事をすると、さなぎは軽快に出て行った。
さあ、私も頑張るぞ!
作品名:私のやんごとなき王子様 利根編 作家名:有馬音文