私のやんごとなき王子様 利根編
恥ずかしさを誤摩化すためにさらに力を込めてこねると、コンロの方から声が飛んで来た。
「そろそろ焼くよ〜!」
上手に焼き上がったハンバーグを前に、私達は食堂に座って他の人達の反応をじっと見守った。
皆それぞれに「美味しい!」と言いながら食べてくれている。
その言葉を聞くと自然と笑顔になって、ふと隣りに座っていた利根君と目が合った。
「よかった。皆美味しいって言ってくれてる」
利根君も同じ事を考えていたらしく笑っている。
「うん!」
「衣装も小物も頑張って作って、皆に喜んでもらえるといいね」
その言葉に私は胸が暖かくなった。
「そうだね。私、頑張る」
「それじゃあ自分達で作ったハンバーグを食べようか?」
「はいっ」
こんな気持ちでご飯が食べれるなんて思わなかった。だってすごく幸せなんだもん。
水原さんの事は気になるけど、今こうして隣りで笑っている利根君を見ていられるのはやっぱり嬉しい。
私は口の中に広がるジューシーな味に、増々笑顔になった。
作品名:私のやんごとなき王子様 利根編 作家名:有馬音文