私のやんごとなき王子様 利根編
7日目
今日も朝からミシンと格闘。
昨日海で遊んだのがいい気分転換になったらしく、皆の雰囲気がどことなくはつらつとしている。
私はというと、実は利根君と水原さんの事が昨日から気になっちゃって、ミシンを動かしながらも二人の様子を伺っていた。
少し離れた所にいて、利根君は私に背を向けているから私がこんなにちらちら見てるなんて思いもしないんだろうな。
なんて事を考えていると、利根君の所に水原さんが近づいて何やら話している。一体どんな事を話してるのかな。
どことなく水原さんの顔が嬉しそうで、私の胸はツキンと痛んだ。
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昼食を済ませた後、私達小道具担当班は調理室へと向かっていた。
今日は私達が食事当番なのだ。とはいってもメイン料理を作るのはあくまでも宿舎のシェフの方々。私達は教育の一環として、担当班ごとに日替わりで1品を作るというのが決まりなのだ。
1品とはいっても、全校生徒プラス先生の合計200人分の料理だから作る量がさすがに多い。
私達が作るのはハンバーグ!
ハンバーグ大好きな私としてはとっても嬉しいのだけど、このタマネギのみじん切りが目にしみてなんとも辛いのよね……。
「ううう……ずずっ」
「小日向さん、代わるよ」
「うえ?」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった私がしかめ面で顔を上げると、利根君が私の手元から包丁をゆっくりと取った。
「あ、利根君……」
やだもう、私ったらすごい顔してるのに!
慌てて近くにあったキッチンペーパーで鼻をかむ。
「ごえんえ……」
「いいよ。小日向さんは少し離れてた方がいいよ。近くにいるとまた涙出るでしょ?」
鼻を押さえた状態のままお礼を言うと、利根君は笑って次々タマネギをみじん切りにして行く。
「ん、ありあと」
作品名:私のやんごとなき王子様 利根編 作家名:有馬音文