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私のやんごとなき王子様 利根編

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「泳いでもいいけど、まだ作業が残ってるから体力は残しておかないといけないよね」
「そうだね。利根君は――」

 私が利根君は泳ぐの好き? と聞こうとしたその時だった。

「利根君!」

 突然名前を呼ばれ、利根君の腕が後ろから掴まれた。
 振り向くとそこにはさっき部屋で利根君と話していた女子、水原さんが、麦わら帽子に白いワンピースの水着姿で利根君の腕にしがみついていた。
 何故かそれを見て私はムッとする。

「水原さん? びっくりした。どうしたの?」

 あんまりびっくりしているように見えない利根君だけど、相変わらずの口調で突然の乱入者を迎えた。さり気なく腕から彼女の手を放しているのが見えて、ほっとする。

「2年の女の子が足を怪我したみたいなの。貝殻で切ったと思うんだけど、医務室に連れて行くのを手伝ってくれない?」
「えっ? 怪我?」

 私と利根君は同時に驚いた。

「あそこにいる子よ」

 そう言って水原さんが指差した所に、怪我をしたらしい女の子ともう一人女の子がいた。

「男の子の方が力があるでしょ? だから肩を貸してあげて欲しいの」
「分かった、行こう」
「あ、私も行く!」

 咄嗟に言葉が出た。自分でもちょっとびっくりしたけど、だって何だか利根君が取られるみたいな気がしたから。
 だけど私のその言葉に、水原さんが首を降った。

「大丈夫よ、小日向さん。あんまり人ばかりいても仕方ないから、私達で行って来る。あなたは気にせずゆっくりしていて」
「でも……」

 何でそんな事いうの? 私が邪魔だってこと!?
 危うく言いそうになって、私はぐっと堪えた。と、利根君が少し眉尻を下げて私を見た。

「ちょっと行って来るよ。すぐ戻って来るから、また後で話そう?」

 優しくそう言うと、利根君は水原さんと連れ立っていなくなった。
 取り残された私はその場に座り込み、一人でずっと馬鹿みたいに波が打ち寄せるのを見続けていた。