幻想を盗む(仮)
思い当たったらすぐに行動するのは、シーアンの信条である。彼は真面目で、ついでに勤勉なほうだった。さらに「学校」では優秀な成績を収める生徒だった。
だからといって犯罪紛いのことをしてまでレポートを仕上げたいのは、成績のためではない。
単純に、彼が父親譲りの、諦めの悪い性格だったからだ。
故に彼は月の出ていないその夜に、「とある方法」を使って、博物館内へと忍び込んでいた。よくないことではなあるが、とにかく彼にとっては、そこまではよかったのである。
目的の文献を、叩き割ったガラスケースから取り出している黒い影と、相対するまでは。