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私のやんごとなき王子様 土屋編

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後日談


「よっ……とととっと……」

 両手いっぱいに画材を抱きしめた私は、落さないように気をつけながらレジへと向かっている真っ最中。

「よいしょっと……これだけお願いします」
「はい、有難うございます」

 何とかレジへと到着して、画材をドサドサと置いていく。
 私が今いるのは、演劇祭の準備期間初日に土屋君と来たあの画材屋さん。

 演劇祭以来すっかり私も絵を描く事にハマってしまって、今では毎日絵筆を握っている。
 お店のおばちゃんが品物を一つ一つレジに通していくのを眺めながら、あそこはこの色を使おう、あっちはこの筆がいいかな? なんて考えている時間も楽しい。

「有難うございます、全部で――」
「支払いは土屋に回しておいてくれ」

 後ろから突然かかったその声に、私は瞬間的に振り向いた。

「土屋君!」
「美羽、買い物に来るなら僕も行くといったろう?」
「だって……」

 だって一緒に来ると全部土屋君が支払ってしまうんだもの。
 画材なんて決して安い買い物では無いのだから、毎度毎度そんな事させるわけにはいかない。

「だってじゃない。支払いは土屋家に」
「かしこまりました」
「すみません」

 こんな私達のやりとりを、このおばちゃんに見せるのはもう何度目だろう。本当にいつも申し訳ない。

「さ、行くよ」

 そう言うと土屋君は、右手で画材の沢山入った紙袋を持って颯爽と店を出て行ってしまう。

「待って! 土屋君!」

 私はおばちゃんに会釈を一つすると、慌てて土屋君の後を追った。