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私のやんごとなき王子様 土屋編

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「君の存在だよ」

 土屋君は私の目を真っ直ぐに見つめるとそう言った。

 ――私の……存在?

「君がいるから僕は変われた。僕に足りないものを僕は手に入れた」
「足りないもの?」
「誰かを思う気持ちさ」

 土屋君のその美しい眼差しが私を焼き尽くすかのような熱っぽさを帯びて、全身に注がれる。
 鼓動が急速に速くなる。これって……

「君は僕のミューズだ。君のいない芸術なんて考えられない! 僕はもう、君の存在なくしては筆をとる事が出来ない」

 土屋君が私を抱きしめる。

「どうかずっと側にいて――僕の美羽」
「うん……! うん……!」

 土屋君の腕の中で私は大粒の涙をこぼした。

 あなたにとって芸術は命。私なしでは生きられないというのなら、それは私も同じなの。
 これからも私は、あなたが彩る世界で生きて行きたい。

 あの日、あの廊下で――あなたが私を誘ってくれて良かった。あなたと一緒に演劇祭に参加できて良かった。

 ――あなたの世界に触れる事が出来て本当に良かった。


 ありがとう、土屋君。
 どうかこれからもずっと――私を側においてね。