私のやんごとなき王子様 土屋編
「みんなでみんなの為に何かを作って、食べてもらうのって絶対楽しいよ」
「僕には興味が無い事だね」
取りつく島もないとはこの事だ。
まったくもう……この芸術家様には何をさせたらいいのかな。
なんて考えながら、かぼちゃを煮込んでミキサーにかけていく。
うーん……あ、そうだ!
ミキサーに牛乳を投入している時に、すっごい名案がひらめいちゃった。
「土屋君、出来上がったスープに生クリームで絵を描いてよ」
「絵?」
「そう、仕上げはやっぱり土屋君の芸術じゃなくっちゃ」
私がそう言うと、土屋君は満足そうに微笑んだ。
「分かってるじゃないか」
そう言うと生クリームを手に取り、スープの入った皿を手元に引き寄せた。
――単純な所もあるんだよね、ホント。
少し微笑ましくなって、思わず私にも笑みがこぼれる。
水原さんとの事が何だか引っかかっていたけれど、やっぱりこうして過ごしているとすごく楽しい。
土屋君は竹串を使って、かぼちゃ色のキャンバスに器用に絵を描いていく。それはシンデレラの物語だったり、ハロウィンのパーティーだったり、かぼちゃにちなんだ賑やかなものばかりだった。そのスープから土屋君の楽しさが伝わってきて、なんだか心が温かくなる。
途中から他の子達も加わって、みんなで全てのスープに絵を描きあげた。
作品名:私のやんごとなき王子様 土屋編 作家名:有馬音文