私のやんごとなき王子様 土屋編
夕食の時間になり生徒や先生方が席に着くと、あちこちから弾んだ声が聞こえてきた。
「見て、これすっごい可愛い!」
「きれ〜」
「上手いもんだなー」
「食べるの勿体なーい」
そんな楽しさに満ちた声が、どんどん耳に入ってくる。
隣に座っている土屋君の顔を見ると、その表情はとても清々しかった。
「君」
「ん?」
「ありがとう」
――え? いま……土屋君が……私に言ったよね? 『ありがとう』って……。
急速的に胸が弾んで、私は思わず満面の笑み。スープを一口、口にすると甘い味が広がった。
うん、私きっとこのスープの味を一生忘れないと思う。
胸に広がった温かな思いが、私をとても幸せな気持ちにしてくれる。
私の方こそ、有難う――土屋君。
心の中でそっと呟いて、私はもう一度微笑んだ。
作品名:私のやんごとなき王子様 土屋編 作家名:有馬音文