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私のやんごとなき王子様 土屋編

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 ぎゅっと両手に握りこぶしを作って、私は土屋君を正面から見据えた。
 と、我に返る。
 あ〜あ、何を言ってるんだろ……喧嘩がしたい訳でも不愉快な思いをさせたい訳でもないのに、土屋君と一緒に居るとペースを乱されて何だかいつもの私じゃなくなっちゃう気がする。
 心の中に湧き上がってる悲しみの感情に飲み込まれそうになったその時――土屋君が小さく息を吐いた。

「ふう……もういいよ。好きにすればいいさ」

 え?
 ぼそりと呟いて私達の前から去って行く土屋君の横顔が、一瞬すごく辛そうに見えた。

「小日向、悪かった。腹が立ってお前に面倒を押し付けちまった」

 土屋君がいなくなって、先生が私に頭を下げた。

「あ、いいんです。私もカッとなってしまって……もう大丈夫です。土屋君の事、しっかり見張ってますから。でも、何かあった時は助けて下さいね」
「当たり前だろ? 俺は先生なんだからな」
「先輩……僕じゃお役に立てないかもしれないけど、何かあったらいつでも言って下さいね」
「ありがと、潤君」

 私は二人に向ってそっと微笑むと、土屋君の向かった船室の方へと足を運んだ。 




 船室からふと窓の外を見ると、遠くに島が見えた。
 トクンと胸が鳴る。
 もうすぐ到着するんだ。高校生活最後の合宿が、本当に始まるんだ――――