私のやんごとなき王子様 土屋編
「僕が自分の意志でそうしたいんだ、僕の意志を邪魔する権利が君達にあるのかい? もし今この瞬間を逃したら、この感覚は二度と味わえないんだ、それを君達が再び味わえると保証でもしてくれるのかい?!」
「そんな事を言ってるんじゃない! お前を心配してるんだ!」
「ははっ! それこそ大きなお世話ですよ、先生」
プチン……
その瞬間、私の何かが切れた。
「大きなお世話で結構っっっ!!!」
私が急に大声を出したものだから、先生と潤君が驚いてこちらを振り向いた。
私はというと、半分無意識のうちに肩を怒らせ、ずんずんと土屋君に近づいてまた声を荒げていた。
「自分の勝手で海に飛び込みたいって土屋君が言うんだったら、私も自分の勝手で土屋君を飛び込ませたりしない!」
そして自分でも信じられない位の力で、惚けた顔の土屋君の腕をがっしりと掴んだ。
「――で、でかした! 小日向!」
「先輩さすがですっ!」
真壁先生と潤君は漸く我に返り、急いで私に続いて土屋君を取り押さえた。
作品名:私のやんごとなき王子様 土屋編 作家名:有馬音文