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私のやんごとなき王子様 土屋編

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「土屋君、どういうつもりなの?」
「どういうつもりも何も。君の方こそどういうつもりだい? こんな美しい海を、それに反射する光
を見ても何も感じないのかい?」
「感じるわ、綺麗だと思うわよ。でもだからってそれが何で飛び込みに繋がるワケ?」

 私が少しイライラしながらそう言うと、土屋君は実に愉快そうに笑い始めた。

「あっははは! 面白い事を言うね、君は。そんなの当たり前じゃないか。体に染み込んだ感覚というのは一生消えないんだよ? だから僕は飛び込むのさ。そうしてこの光を体いっぱいに受け止められれば、それは僕の脳に記憶として結びつき、それはやがてこの腕に力を与えるのさ! 素晴らしい水面を描く力にね!」
「……土屋君、あのね。一歩間違えれば命を落とすのよ? 分かってるの?」
「命? 芸術を探究した結果落とす命ならば惜しくはないね!」
「土屋君!」

 そんなやりとりをしていると、遠くの方から潤君の「先生、こっちです!」という声が聞こえた。良かった、真壁先生見つかったんだ。

「おい、土屋! お前何やってんだ!? 水中大脱出でもやる気か、バカ!! 危ないだろうが!」

 もの凄い勢いで走って来ながら言ってる真壁先生の言葉が変だ。土屋君の状態を見てきっと動転してるんだろうな。なんて事を考えていると、土屋君が深いため息を吐いた。それはもう、深いため息を。

「はあ……全く、君達には呆れるよ。芸術というのはね、五感を常に多方向に向けていなければいけないんだ。僕のやろうとしている事が危ない? それこそ危険な考えだよ! 今その時にやりたいと感じた事をやらなければ、二度とその感覚を味わう事は出来ないんだ。僕は今、この海の光を体中で感じたいんだ。だから邪魔をしないでくれ!」
「お前のその芸術に対する考え方はすごいと思うぞ! だけどな、絶対に危険だと分かっている事を目の前にして、それを黙って見過ごすなんて出来る訳ないだろ?!」

 真壁先生はそう言って真剣な顔で怒った。

「そうですよ、危ないですよ、土屋先輩!」

 潤君も本当に不安げな表情だ。だけど土屋君はそんな事おかまい無しに続けた。