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私のやんごとなき王子様 波江編

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「う……うん。ていうか潤君の方こそ大丈夫? 私なんか受け止めて」
「良かった……。先輩に怪我でもさせたら僕……」

 潤君の声が小さく震えているように聞こえた。完全に後ろから抱きしめられている形になっているから、潤君の表情は分からない。でも……。
 いつもは子犬みたいな潤君が妙に大人っぽく感じる。華奢にみえる潤君なのに、回された腕はガッチリとしていて間違いなく男の子のものだ。
 ……なんだか急速に恥ずかしくなってきた。

「ごっ、ごめんね! 本当に! 大丈夫?!」

 私は急いで身を翻して潤君を正面から見つめた。

「はい、僕は全然」

 潤君は少しだけ照れ臭そうにしながら、それでもにっこり笑ってくれた。

「潤君……」
「先輩が無事で良かったぁ」

 ほーっと息を吐きながら、今度は潤君が梯子に手をかける。

「上の方は僕が見ますから、先輩は下から見ていって貰えますか?」
「うん、分かった。潤君も気を付けてね。私が言えた事じゃないけど……」
「はいっ! 有難うございますっ」

 頭上から元気な声が聞こえる。私はそれをとても心地よいと思う。潤君は優しくて可愛い後輩――だけど少しだけ感じてしまった『男の子』に妙にドキドキしながら、私は画集を探し続けてた。



*****

 無事にお目当ての画集とDVDを借りる事に成功した私と潤君は、役者担当が集合している体育館へと向かった。

「先輩がどんな役になるのか、僕すっごく楽しみです!」
「私なんて、ただの村人Dだよ」
「そんな事無いです! 僕、先輩にはオデット役をやってほしいです!」
「あははっ、それはいくら潤君の希望でも叶えてあげられないなー」

 なんて会話をしていると、あっという間に体育館へと到着した。
 中へ入ると風名君や亜里沙様をはじめ、役者担当の子は皆揃っていた。

「遅くなりました! これ、頼まれていた資料です!」
「お、サンキュ」

 潤君から資料を受け取った演出担当の3年生は、DVDと画集を見ると満足そうに微笑んだ。