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私のやんごとなき王子様 波江編

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「小日向、役者選んでくれたんだな」

 ふいにかけられた言葉に驚いて声の主を見ると、風名くんが爽やかな笑顔で私に近づいてきてくれていた。

「うんっ、最後だから思い切ってみちゃった」
「小日向なら大丈夫だよ、俺が保障する」

 風名君の優しい言葉に不安が少しだけ解消される――と思った瞬間、棘のある視線を感じた。うっ、他の女の子達の視線だよね……。チラリと棘の先を確認すると、思ったとおり。亜里沙様を中心に座った女子のグループが刺すような視線を私に送っている。中心に優雅に座った亜里沙様は笑顔のままだけど、それが逆にすごく怖い。

「先輩! 今から女子の配役の投票開始するそうですよ!」

 そこへ潤君がいつもの調子で元気に微笑みながら現われてくれた。彼の無邪気さに凍っていた空気が溶けていくような心地すらする。なんだかとっても救われた気分だ。

「有難う!」

 風名君の王子様役と、潤君の王子様の従者役は既に決まっている。今から投票で決めるのはヒロインのオデット姫と、そのライバルであるオディール。これに選ばれなかった生徒達はくじで公平に役が振られる。

 役者担当の全員に投票用紙が配られ、それぞれオデットとオディールにふさわしいと思う人の名前を書く。私は勿論、オデットには亜里沙様を書いた。

 名前を記入している最中にふと顔を上げると、風名君がこっちを見ていてくれていて、私と目が合うとにっこりと笑ってくれた。なんだか少しだけ恥ずかしいようなそんな気持ちになってしまう。照れ隠しに私は急いで記入を終了した。

 全員の投票が終わると、演出担当の男子が用紙に書かれた名前を一人一人読み上げていく。ホワイトボードには正の字が増えていく。
 結果は当然のようにオデットには亜里沙様、オディールには3年でモデルをやっている子に決まった。驚いたのはオデット姫に私が2票も投票されていた事だ。一体誰が……?

「それじゃ、残りの配役をくじで決めまーす」

 演出担当の声でハッと意識が戻る。いけない、集中しなくちゃ。

「次ー、小日向さんくじ引いて下さーい」
「はいっ!」

 ガサゴソとくじの入った箱に手を入れ、紙を一枚引く。中をみると「オデットの友人C」と書いてあった。

「これです」
「はい、友人Cですねー」