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私のやんごとなき王子様 波江編

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 午前、午後とみっちり練習が終わった夜になり、私は衣装担当の人からの呼び出しで一人小道具部屋へ急いでいた。
 急遽オディール役を演じることになったから、衣装を私のサイズに変えなくてはいけないのだ。

 広い室内には衣装やら小道具やらが壁にずらりと掛けられていて、それは色とりどりでとても美しかった。

「小日向さん」
「あ、利根君」

 どうやらオディールの衣装を担当しているのは利根君らしく、きらびやかな衣装に見蕩れていた私に近づいて来て声を掛けてくれた。?

「まだ残って作業してる人結構いるんだね」

 ミシンを必死に動かす生徒を見て私が言うと、利根君が頷いた。

?「明後日には出演者が衣装を着ての練習だから、それに間に合わせる為にね。明後日の状態を見て、最終日には細かい修正しないといけないから」
?「本当、大変だね。ありがとう」

 演劇に出演する人間だけじゃ劇は出来ない。こうやってたくさんの人の支えがあるからこそ、形になって出来上がって行くんだ。?

 去年も一昨年も裏方をしていた時は気付かなかったけど、自分が役者として出る今年は裏方の仕事がどれほど大切かって事を痛感する。?

「それじゃあちょっとオディールの衣装を着てみてくれる?」
「うん」


*****


「それじゃあまたね、小日向さん」?
「ありがとう、利根君。またね」?

 無事衣装の寸法も測り終え、私は利根君と別れて部屋へと戻った。

 廊下には人も少なくて、皆それぞれ部屋に戻ってたり遅くまで作業していたりするんだろう。私は足早に階段を昇る。? 

 あれ?

 ふと人の話し声が聞こえて来て私は足を止めた。?

 声に意識をかたむけると、自動販売機のある廊下の方からそれは流れてきていた。