私のやんごとなき王子様 波江編
8日目
翌日の朝、私は練習に行く準備を部屋でしていた。
? それにしても昨日の夕食当番は楽しかったな。潤君と一緒に料理をして、潤君の知らない一面も見れたし。うん、ちょっと得した気分。
「美羽〜。な〜ににやけてんのよ!」?
「えっ? 私、にやけてた?」
? 咄嗟に両頬を手で隠すと、さなぎが笑った。
?「うふふ。にやけてるは冗談だけど、昨日の食事当番は相当楽しかったみたいね」
?「あ、もうっ……うん、楽しかったよ」
? 昨晩も夕食が終わってからさなぎと話したけど、朝になっても私ったらまだ締まらない顔してたのね。恥ずかしい。?
練習に出かける前のちょっとした時間、さなぎとそんな他愛無い会話をするのが楽しい。?
「でも美羽がオディール役をするなんて、ホントびっくりだね」
?「うん、びっくり。足引っ張らないようにだけはしないと」
?「大丈夫だって! 美羽、昨日も遅くまで起きて台本読んでたじゃない。そんだけ頑張ってるんだから、大丈夫! このなぎさ様が保証する!」
? ドンと胸を叩くさなぎに、私は思わず笑った。?
「ありがと、さなぎ」
?「それじゃあ、また後でね!」
? 手を振って自分の仕事へ向かうさなぎに手を挙げて返し、私も稽古部屋へと向かった。?
作品名:私のやんごとなき王子様 波江編 作家名:有馬音文