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私のやんごとなき王子様 波江編

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「桜」
「亜里沙様」
「桜先輩」

 白く輝く肌を日傘とつばの大きな帽子でしっかりと隠したその姿に、私は思わず見蕩れる。
 珍しく取り巻きはいなくて、亜里沙様一人だった。どうしたのかな?

「お前日焼けするから部屋に残るんじゃなかったのか?」

 風名君は怪訝そうにそう尋ねた。
 亜里沙様は風名君からは微塵も目を離さず、あの美しい微笑みで答える。

「今週は演劇祭の方で忙しいですから、ドラマの事をお話しする時間がないでしょう? 今は自由時間ですから、お互い空いているうちに来週の撮影のお話をしておきたかったんですの。昨日の夜も少しお話しましたけど、やはり納得出来ない所があって……」
「ドラマの事か……」

 大事な仕事の話しだと言われ、風名君は頬を掻いた。

「監督とも先ほど電話でお話したんですけど、風名君の意見を聞かせて頂きたくって」

 風名君は一瞬考える様な表情を見せたけど、すぐに仕事モードの顔に切り替わった。

「いや、時間もないし、早く詰めておこう。じゃあ俺、ちょっと行って来るな」

 そう言うと風名君は少しだけ寂しそうに笑った後、亜里沙様と一緒に宿舎の方へと去って行った。
 風名君と亜里沙様は学生でありながら、タレントとしての仕事もこなしてるんだもんね。本当に大変だよね……。

「風名先輩達、大変そうですね」
「うん」

 潤君も心配そうに声を洩らす。

「でも、僕――少しだけ嬉しいです」
「え?」

 いつの間にかピタリと寄り添うように隣にいた潤君の顔を、私はそっと見上げた。

「だって先輩と今、こうして二人きりでいられるんですから」

 潤君は私からの視線を真っ直ぐに受け止めると、そう言いながら微笑んだ。
 これって……?
 なんだか急速的にこの状況が恥ずかしくなってきた。どうして? 私、潤君を意識してる……?