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私のやんごとなき王子様 波江編

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「チャンス? ……先輩、僕は芸能界に興味なんてありません。そんなもの見てません。僕は――いつだって先輩を……」

 私? 私を?

「えっと、先輩の方見たら顔色がすごく悪かったから。だから……その……」
「……」


 ……変な間が空いてしまった。しばらく黙ったまま、部屋の方へと歩みを進める。

 気付けば私の部屋の前に着いていた。

「えっと……やっぱり環境が変わったりすると、体調って崩しやすかったりしますよね! 少し、休んで下さい。僕、また呼びに来ますから!」

 潤君の優しい手が私の手からそっと離れる。

「潤く……」
「美羽っ!?」

 突然前方から飛んで来たさなぎの叫び声によって、私の声は見事にかき消されてしまった。

「あ……さなぎ」

 驚いていると、さなぎはすぐに潤君とは反対側の私の隣りに並ぶと、眉間に皺を寄せて私のおでこに手を当てた。

「あんた顔真っ青だよ! どうしたのよっ!」
「何でも無いよ」
「んな訳ないでしょ?! 波江君、美羽を運んできてくれてありがとう!」

 大げさな事言うな。なんて思っていると、さなぎは私の腕を肩に回して目の前のドアを開けた。

「ほら美羽、波江君にちゃんとお礼言いなよ」
「ん……潤君、あの、本当に有難う」
「いえっ! 何かあれば僕、すぐにまた呼びに来ますんで! ゆっくり休んで下さい!」
 
 そういうと潤君は小さく微笑んで、くるりと踵を返して行った。


 部屋に入ると私は、さなぎによってベッドへ投げ出された。

「……痛い」

 ベッドに顔から倒れ、それでも体を動かす気力もなかった私は取りあえず大きなため息と一緒に顔をしかめた。

「美羽〜。何かあったの?」

 さなぎの言葉が胸に刺さる。私はゆっくりと体を仰向けにすると、天井を見つめて心の中に溜めた思いを吐き出した。