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私のやんごとなき王子様 波江編

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「小日向先輩!」

 正面から私に向って手を振りながら子犬のように走ってくる生徒が見える。
 潤君だ。

「潤君? 廊下は走っちゃいけませんよーーっ」

 少しだけ大きな声で言うと、潤君はピタっと足を止め、その後すごく早足でこちらへと近付いて来て、あっという間に私の目の前に立っていた。

「小日向先輩! 聞きましたよっ! 演劇祭、舞台に立たれるんですね!」
「えぇ?! だ、誰に聞いたの?」
「え? 職員室の前で聞いたって、うちのクラスの女子達が話してたんですけど」

 う……やっぱり。
 演劇祭で舞台に立つというのはそれだけ注目されるという事。どこでどう話が漏れるのかは知らないが、毎年こうやってあっという間に舞台に立つ者の名前は知れ渡る。去年までは私も、そんな先輩や後輩達をきゃあきゃあ言いながら、さなぎと応援してたのに。……ハァ。なんだか気が重たくなってきちゃう。

「僕……僕、すっごく嬉しいです!」

 潤君は本当に嬉しそうに私に向って微笑んでくれている。なんだかその顔を見ていたら、ちょっとだけ気持ちが軽くなった。

「あ、僕今から先輩方に頼まれた資料を集めに図書室まで行くんですけど……」
「良かったら付き合おうか?」

 私がそう言うと潤君は顔をパァっと明るくした。その大きな目はより一層大きく見開いて、もし潤君に尻尾が生えていたら、ちぎれんばかりに振ってるだろうなって言う感じ。

「本当ですか?! うわぁ、僕すっごく嬉しいです! 行きましょう! ぜひ! もう早速!」

 うん。きっと大変な合宿になるだろうけど、潤君と一緒なら頑張れる――。
 そんな事を思いながら、私達は図書室へと向かった。