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私のやんごとなき王子様 波江編

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「おい、土屋! お前何やってんだ!? 水中大脱出でもやる気か、バカ!! 危ないだろうが!」

 もの凄い勢いで走って来ながら言ってる真壁先生の言葉が変だ。土屋君の状態を見てきっと動転してるんだろうな。なんて事を考えていると、土屋君が深いため息を吐いた。それはもう、深いため息を。

「はあ……全く、君達には呆れるよ。芸術というのはね、五感を常に多方向に向けていなければいけないんだ。僕のやろうとしている事が危ない? それこそ危険な考えだよ! 今その時にやりたいと感じた事をやらなければ、二度とその感覚を味わう事は出来ないんだ。僕は今、この海の光を体中で感じたいんだ。だから邪魔をしないでくれ!」
「お前のその芸術に対する考え方はすごいと思うぞ! だけどな、絶対に危険だと分かっている事を目の前にして、それを黙って見過ごすなんて出来る訳ないだろ?!」

 真壁先生はそう言って真剣な顔で怒った。

「そうですよ、危ないですよ、土屋先輩!」

 潤君も本当に不安げな表情だ。だけど土屋君はそんな事おかまい無しに続けた。

「僕が自分の意志でそうしたいんだ、僕の意志を邪魔する権利が君達にあるのかい? もし今この瞬間を逃したら、この感覚は二度と味わえないんだ、それとも君達が再び味わえると保証でもしてくれるのかい?!」
「そんな事を言ってるんじゃない! お前を心配してるんだ!」
「ははっ! それこそ大きなお世話ですよ、先生」

 プチン……
 その瞬間、私の何かが切れた。

「大きなお世話で結構っっっ!!!」

 私が急に大声を出したものだから、先生と潤君が驚いてこちらを振り向いた。
 私はというと、半分無意識のうちに肩を怒らせ、ずんずんと土屋君に近づいてまた声を荒げていた。

「自分の勝手で海に飛び込みたいって土屋君が言うんだったら、私も自分の勝手で土屋君を飛び込ませたりしない!」

 そして自分でも信じられない位の力で、惚けた顔の土屋君の腕をがっしりと掴んだ。

「――で、でかした! 小日向!」
「先輩さすがですっ!」

 真壁先生と潤君は漸く我に返り、急いで私に続いて土屋君を取り押さえた。