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私のやんごとなき王子様 波江編

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「なにしてるのよ! 土屋君!」

 大きな声で土屋君を制す。けれど彼の顔はケロッとしたままで、顔色一つ変わっていない。

「なに、この海の光は素晴らしいから、是非とも体に染み込ませたいと思ってね」

 なんて口走ってる。正気なの!?
 ……正気なんだろうな、彼の場合。
 私は諦めて潤君に向き直ると、先生を呼んで来て貰えるように頼んだ。

「はいっ! 真壁先生を呼んできます!」

 潤君はそう返事をすると、すごい速さで船室の方へと消えて行った。……さて。

「土屋君、どういうつもりなの?」

「どういうつもりも何も。君の方こそどういうつもりだい? こんな美しい海を、それに反射する光を見ても何も感じないのかい?」
「感じるわ、綺麗だと思うわよ。でもだからってそれが何で飛び込みに繋がるワケ?」

 私が少しイライラしながらそう言うと、土屋君は実に愉快そうに笑い始めた。

「あっははは! 面白い事を言うね、君は。そんなの当たり前じゃないか。体に染み込んだ感覚というのは一生消えないんだよ? だから僕は飛び込むのさ。そうしてこの光を体いっぱいに受け止められれば、それは僕の脳に記憶として結びつき、それはやがてこの腕に力を与えるのさ! 素晴らしい水面を描く力にね!」
「……土屋君、あのね。一歩間違えれば命を落とすのよ? 分かってるの?」
「命? 芸術を探究した結果落とす命ならば惜しくはないね!」
「土屋君!」

 そんなやりとりをしていると、遠くの方から潤君の「先生、こっちです!」という声が聞こえた。良かった、真壁先生見つかったんだ。