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私のやんごとなき王子様 波江編

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 そうこうしている内に、校長先生の挨拶が始まった。
 校長先生の挨拶はいつもすごく簡潔で、長ったらしくないから好きだ。
 最高の演劇祭になるよう、全校生徒力を合わせて怪我が無いように頑張って下さい。という言葉を最後に、乗船が始まった。

 乗船が終わると役者専用の客室で、誰が言うでも無く台本の読み合わせが始まった。
 私はというと、そんな雰囲気についていけずに、それでも何とか迷惑だけはかけないようにと必死だった。けど……。
 途中から通し稽古のようになったその読み合わせは、私に少しだけショックを与えていた。だって風名君も亜里沙様も完全にスイッチが入っちゃってプロの役者モードで――それは当然私なんかが入る余地も無いような世界で……。
 私は少ないセリフを声に乗せるだけで精いっぱいだった。


*****


「はーっ」

 ため息を大きく吐きながら、自動販売機でジュースを買った。
 なんとか読み合わせは終わったものの、こんなんで本当に大丈夫かな?
 そんな風に落ち込んでいると、ふいに背後から元気な声がかかった。

「先輩!」

 振り向くとそこにはやっぱり潤君。

「潤君……」
「先輩、もし良かったら一緒に甲板にでも出ませんか?」

 甲板か……。うん、潤君とならいい気分転換になりそう!

「うん、喜んで」
「本当ですか!? やったぁ!」

 それだけの事なのに、潤君はにぱぁっと大きく微笑んだ。
 うふふっ、潤君といると自然にこっちまで元気になれちゃうな。

 甲板のベンチに二人で座る。風が凪いで気持ちいい。

「ふーっ」

 私は大きく深呼吸をした。

「先輩、演技楽しいですか?」

 潤君がふいにそんな事を聞く。

「……ちょっとだけ、辛いかな」

 潤君にはなぜかいつも甘えてしまう――こんな本音も漏らせるほどに。
 私の方が2年も年上で、本当なら私がしっかりサポートしなくちゃなのに。
 それでも潤君の優しさは私にとって、この風のように心地よくて――いつもつい寄りかかってしまうのだ、その優しさに。