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私のやんごとなき王子様 風名編

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「この間洞窟に行った時、学園に入った時に小日向の言葉に救われたって話したろ? あの時からずっと気になっててさ……ずっと小日向の事見てて、やっぱりすごく優しい子だって思ったら好きになってたんだ―――えっと、それで、返事をもらえると嬉しいんだけど」
「あっ! はいっ!!」

 直立不動の構えになると、私は緊張で引きつる頬に力を入れてはっきりと答えた。
 その時私の頭の中では洞窟で風名君と一緒に見た星空がいっぱいに広がっていた。

「私も、風名君の事が……好きです!」
「っ―――――――ホントに?」

 すごく驚いた顔をする風名君に、私は思わず声が大きくなる。

「嘘なんか吐かないよ!」
「いや、うん……分かってるけど―――やばい……すっげー嬉しい……」

 そんなの……私の方が嬉しいに決まってる。だって、風名君が私の事を好きだって言ってくれたんだもの。

 ずっと握られたままだった左の手は、お互いの汗で変に湿っていた。
 その感覚が妙に恥ずかしくて、私は風名君の顔をまともに見る事が出来なかった。

「――じゃあ、今日から小日向はオディールじゃなくて俺の本当のオデットだな」

 風名君はそう言うと再び片膝を着き、私の手の甲に優しいキスをくれた。
 演技ではなく、本当のキスを。
 と、ふと頭の中で一人の人物の顔が浮かび上がった。

「あ……」
「どうした?」

 私が変な声を出したものだから、風名君が不思議そうにこちらを見る。

「いや、あの……マネージャーさん、大丈夫かな?」

 そう、風名君はアイドルなんだ。私みたいな一介の女子高校生が気安くお付き合いをして良い人物ではないのだ。

「ああ、あの時の事心配してるのか? 大丈夫、絶対に駄目だなんて言わせない。俺が小日向を守るから……俺を信じて?」

 強い眼差し。
 彼の意志の強さは知っている。どんな逆境にも負けないで努力をする、強い男の子なんだ。
 私はこの人を信じて着いて行こう。どこまでも、ずっと―――

「うん、信じるよ」

 しっかりとそう返事をすると、風名君は私の手を握る力を強めた。